今日は、新春恒例の宮中行事「歌会始の儀」が皇居でありました。毎年すばらしい歌と出会うことができる歌会始。
今年の題は「光」なのですが、なんと秋篠宮紀子さまが、「かたかご」を歌に詠まれまれたのです。
秋篠宮妃紀子さま
早春の光さやけく木々の間に咲きそめにけるかたかごの花
「かたかご」は、カタクリのことで、高岡市の市の花にもなっています。
歌にうたわれているように、雪が解ける早春の頃、二枚の葉を出し、 葉の間からつぼみを一個だけつけた花茎が伸び、サクラより少し早く、薄い紅紫色をした六弁の小さな花を咲かせます。
実はこの花は、その可憐な姿とは裏腹に、日本の古典文学にはあまりなじみのない花なのです。古今集や新古今和歌集などの勅撰集、伊勢物語や源氏物語にもみられません。万葉集にただ一首、次のような大伴家持がよんだ歌が残されているだけです。
もののふの 八十娘子(やそをとめ)らが 汲みまがふ
寺井(てらゐ)の上の 堅香子(かたかご)の花
(巻十九?4143・大伴家持)
現代語訳
おおぜいのおとめたちが、入り乱れて水を汲む、寺井のほとりの、かたくりの花よ。
紀子さまが「光さやけく木々の間に咲きそめにける」と表現されたように、カタクリは、木々が茂りつつも、真っ暗な所では駄目、逆に日当たりが良すぎても駄目、光が「さやけく」差し込むようなところでないと、なかなかうまく育たない植物です。紀子さまのお歌は、カタクリの生態を非常に的確に捉えられていると思います。
秋篠宮ご夫妻といえば、富山国体のあった年、当館にもご来館いただき、講義室では伏木小学校の児童による家持の歌にちなんだ「かたかごの舞」をご覧いただきました。
さて、この紀子さまのお歌によまれたかたかごは、どこのかたかごなのでしょうか?
毎年春になると、多くの方が、当館の庭園に咲くかたかごの花を見にいらっしゃいます。今年も紀子さまの歌のような美しいかたくりが、たくさん咲きますように。