高岡市万葉歴史館トップページ
高岡万葉セミナーの講演録
2006夏季高岡万葉セミナー 柿本人麻呂1
万葉集第一の歌人にして、日本文学史上の最高峰、人麻呂の生きた時代と和歌世界を探る

平成18年8月19日(土)〜20日(日)

会場:高岡市万葉歴史館/講義室

受講料:2日間2500円(学生は1000円
原則として2日間の受講に限ります
定員:先着120名
申し込み:電話・FAXなどで当館まで
周辺に食堂がありませんので、20日は昼食をご持参いただくか、
お申込みください(800円)。

富山県民生涯学習カレッジ連携講座です。

 平成18年 8月19日(土) 

開講式(13:10〜13:20)

第1講(13:20〜14:50)

柿本人麻呂とその時代
講師:寺崎保広(奈良大学教授)

 人麻呂の活躍した時代は、天武・持統・文武天皇の頃、都は飛鳥・藤原京・平城京と移り変わる頃です。それは、「律令国家」ができあがる激動の時代でした。そして完成したのが701年の大宝律令。つまり、日本の国家の形がはっきりとしてきた時期の宮廷を代表する歌人が人麻呂なのです。そこで、万葉集の舞台となった都の移り変わりと、大宝律令前後の国家のしくみ等について、できるだけわかりやすく、お話したいと考えています。

第2講(15:00〜16:30)

柿本人麻呂の歌学と其の表現
講師:稲岡耕二(東京大学名誉教授)

 人麻呂歌集には漢詩のような書き方をした歌群と、宣命大書体と呼ばれるような書き方の歌群があり、それに人麻呂作歌も加えると三つの歌群が考えられます。詩体歌群の「正述心緒」「寄物陳思」の分類が毛詩(詩経)の賦・比・興にもとづくやまと歌の表現方法であることが明確になり、三群の密接な関係も確かめられつつあります。詩体歌群のレトリックが人麻呂作歌の華麗な表現の源泉になっていることを中心に考えてみましょう。




 平成18年 8月20日(日) ● 

第3講(9:30〜11:00)
   
人麻呂の挽歌 −表現史の中の人麻呂−
講師:村田右富実(大阪府立大学助教授)

 人麻呂の作品は、万葉集の歌々の中にあって、たしかにずば抜けているように見える。このことを「人麻呂は天才だから、天才ならではの所業なのだ。」と理解してしまうのは容易である。しかし、どのような作品であっても、それぞれの時代が生み出したものでしかないはずである。
 今回は、人麻呂の挽歌を題材として、その表現を生み出した文学的土壌と、その表現が影響を与えたと思われる次代の歌々を見やることによって、人麻呂挽歌を表現史の一部として定位してみたい。
第4講(11:10〜12:40)

第4講(11:10〜12:40)

石見相聞歌をめぐって
講師:神野志隆光(東京大学大学院教授)

 石見相聞歌は人麻呂の代表作の一つである。論議も多い歌であるが、この歌に即して読み、その解釈についてのさまざまな問題を検討するとともに、『万葉集』における意義にまで踏み込んでみたい。石見相聞歌は、「私情」を歌うということをはじめて明確にし、「相聞」という歌の領域をひらいたものとして評価されるべきだと考える。
第5講(13:30〜15:00)

第5講(13:30〜15:00)

人麻呂の雑歌−その反歌の在り方について−
講師:遠藤宏(成蹊大学名誉教授)

 人麻呂が新たな和歌世界の開拓・展開に多大な貢献を果たしたことは今さら言うまでもない。そしてその貢献は語彙・発想・作品構成等、多岐(あるいは全面)に渉る。その中から、反歌の在り方について考えてみたい。人麻呂の反歌は、長歌の内容を要約するという基本的な在り方の枠に捉われることなく種々の工夫が施されている。その工夫の跡を雑歌の反歌を中心に考える。ただ、事の性質上、相聞・挽歌の反歌にも必然的に言及することになる。

日時:平成18年10月29日(日) 午後1時〜4時30分
 会場:高岡市万葉歴史館/講義室
受講料:1000円 定員:先着120名
申し込み:電話・FAX・E-mailなどで当館まで
周辺に食堂がありませんので、昼食を済ませてご来館ください。


人麻呂歌集古体歌の位相
岩下武彦(中央大学教授)

 人麻呂歌集古体歌(ひとまろかしゅうこたいか)の表現の背景に、中国文学の知識のあることはさまざまな方面から確かめられつつあります。古体歌について、つとに真淵(まぶち)が「詩体にならふさま」といったことは、直感として正しかったということにもなりますが、ただ、それは単に「詩体にならう」ということですませて良いかどうかはなお検証が必要と思われます。ここでは、古体歌の修辞面、殊に「枕詞(まくらことば)」等に着目して、人麻呂が文字による歌を成り立たせてゆく際に、中国文学の何を受け入れ、何を捨て、独自の歌の表現をどう組み立てていったのかということを、訓詁(くんこ)の問題を含めて具体的な例に即して見てゆきたいと思います。

柿本人麻呂の歌の影響と後世の人麻呂崇拝
阿蘇瑞枝(元日本女子大学教授)

 万葉第二期の歌人柿本人麻呂は、万葉集への収録歌数の多さからみて、後代の歌人たちからいかに尊敬されていたかわかります。家持の「幼年に未だ山柿(さんし)の門に逕(いた)らず」の表現は、その人麻呂崇拝の事実を端的に伝えていますが、勅撰和歌集の時代にになってもその傾向は衰えません。後世への影響とその歌の享受のありようを眺めたいと思います。



高岡市万葉歴史館
 〒933−0116 富山県高岡市伏木一宮1−11−11
TEL:0766−44−5511 FAX:0766−44−7335
E-Mail manreki@office.city.takaoka.toyama.jp
高岡市万葉歴史館トップページ
高岡万葉セミナーの講演録