◆「万葉集のなかの道教」
新川 登亀男(早稲田大學教授)
近年、日本における道教への関心が高まっています。道教とは、中国の民族宗教であるといわれていますが、日本古代の人々も、この道教に触れ、何らかの影響をうけてきたと思われます。不老長寿、神仙境、老荘思想、天文、特殊な占い、などは、この道教と関係があるとされています。そこで、山上憶良らの万葉歌人をとりあげて、万葉集に歌われた、そして万葉集にひそむ道教実態を読み解いてみましょう。
◆「古代万葉人の信仰」
山折 哲雄(国際日本文化研究センター所長)
万葉人は死後、魂が山にのぼると信じていました。そのことは『万葉集』の挽歌をみると、よくわかります。死者の魂は山頂をめざしてのぼっていき、樹木や梢や山腹をとりまく雲や霧にのぼって隠れるという意味のことが歌われています。そしてそれにくらべると、あとにのこされた遺体に対する関心はほとんどありませんでした。魂の運命だけが気がかりだったのです。
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