地方の国で名高い、越中の国じゅうに、山はかずかずあるけれども、川はたくさん流れているけれども、
土地の神様が支配していらっしゃいます、新川郡のあの立山に常に雪があり……。
ところで、「立山連峰」はその崇高な姿から、古来、駿河の富士山、加賀の白山とならぶ日本三霊山として、信 仰の対象となってきましたが、
「立山」という山は存在しないのです。
そのため、家持の歌に出てくる「太刀山(たちやま)」がどの山を指すのかについて、古来
さまざまな論が存在しています。
しかし、一度でもその目で、富山湾越しに望む美しい立山連峰や、その峰々の向こうから昇る朝日を御覧いただ ければ、
家持の歌が具体的にどの山を指すのかなどということは、論じるまでもないことと思われます。