高岡市万葉歴史館
〒933-0116 富山県高岡市伏木一宮1-11-11
(とやまけん たかおかし ふしきいちのみや)
TEL:0766-44-5511 FAX:0766-44-7335お問い合わせ

当館のご案内

高岡市万葉歴史館の特徴

万葉の故地、高岡

『万葉集』の代表的歌人であり編者ともされる大伴家持は、746年から約5年間、越中の国守として、国庁が置かれた現在の高岡の地に在任しました。

「越中万葉」の世界

家持やその部下の官人たちは、越中を舞台に300首以上もの歌を今に伝えています。これらの詩情あふれる歌の数々は「越中万葉」として、私たちに多くのことを語りかけてくれます。

万葉情報の全国発信基地

高岡市万葉歴史館は『万葉集』を中心テ-マに据えた初めての研究施設として平成2年(1990)10月に開館しました。

当館では『万葉集』や「越中万葉の世界」を楽しみながら学んでいただける常設展示や企画展示を行っています。また、『万葉集』とその時代を探求するため関係資料の収集・整理し閲覧できるようになっています。そして、その研究成果を全国に発信しています。

高岡市万葉歴史館の特徴

高岡市万葉歴史館は、『万葉集』に関心の深い全国の方々との交流を図るための拠点施設として、平成元年(1989)の高岡市市制施行百周年を記念する事業の一環として建設され、平成2年(1990)10月に開館しました。
万葉の故地は全国の41都府県にわたっており、「万葉植物園」も全国に存在していました。しかしながら『万葉集』の内容に踏みこんだ本格的な施設は、それまでどこにもありませんでした。その大きな理由のひとつは、万葉集の「いのち」が「歌」であって「物」ではないため、施設内容の構成が、非常に困難だったからでしょう。
『万葉集』に残された「歌」を中心として、日本最初の展示を試みた「高岡市万葉歴史館」は、万葉集に関する本格的な施設として以下のような機能を持ちます。

高岡市万葉歴史館の特徴

第1の機能:調査・研究・情報収集機能

『万葉集』とそれに関係をもつ分野の断簡・古写本・注釈書・単行本・雑誌・研究論文などを集めた図書閲覧室を備え、全国の『万葉集』に関心をもつ一般の人々や研究を志す人々に公開し、『万葉集』の研究における先端的研究情報センターとなっています。

第2の機能:教育普及機能

『万葉集』に関する学習センター的性格も持っています。専門的研究を推進して学界の発展に貢献するばかりではなく、講演・学習講座・刊行物を通して、広く一般の人々の学習意欲にも十分に応えています。

第3の機能:展示機能

当館における研究や学習の成果を基盤とし、それらを具体化して展示し、『万葉集』を楽しく学び、知識の得られる場となる万葉体感エリアと万葉学習エリアを持っています。

第4の機能:観光・交流機能

1万m²に及ぶ敷地は、約80%が屋外施設です。
古代の官衙風の外観をもたせた平屋の建物を囲む「四季の庭」は、『万葉集』ゆかりの植物を主体にし、屋上自然庭園には、家持の「立山の賦」を刻んだ大きな歌碑が建ち、その歌にうたわれた立山連峰や、家持も見た奈呉の浦(富山湾)の眺望が楽しめます。

以上4つの大きな機能を存分に生かしながら、高岡市万葉歴史館は大きく飛躍しようと思っています。


館長あいさつ

高岡市万葉歴史館館長 藤原 茂樹

「タブ(ツママ)の前で」

背子せこと たづさはりて れば かひ ゆふされば つつ おもべ ぎし山に には かすみたなびき たにには 椿つばき花咲はなさき ~~(万葉集巻十九4177大伴家持)

二人で手を取り合い、朝が来ると外に出て向かい合い、夕方になると振り仰いでは気を晴らし、見て慰めていた山、その山に、峰々には霞がたなびき、谷のあたりには椿の花が咲いて、~~

いまから1,280年ほど前に、越中国(現在の富山県)の長官だった大伴おおともの家持やかもちが、越前国(現在の福井県)に去った友(大伴いけぬし)との思い出をよんだ歌の冒頭です。この歌に「見和ぎし山」(見ると心が慰められる山)と歌われた二上山の、その東麓のすがすがしい地に、高岡市万葉歴史館は静かにたたずんでいます。本館は、平成2年(西暦1990年)に、日本で初めて『万葉集』を中心テーマに据えた研究施設として、越中国府のあった高岡市伏木に誕生しました。『万葉集』は、北は現在の宮城県、新潟県から、南は鹿児島県までの全国の歌を広く残していますが、都のあった奈良(大和国)が圧倒的多数を占める中で、越中を中心とした歌が330首も大和国に次いで多く残ったのは、天平18年(746年)から天平勝宝3年(751年)の5年間を越中の国守としてこの地での日々を歌にした大伴家持の功績です。丁度その時代は能登も越中国に属していたため能登の歌を含めて337首を「越中万葉」と呼んでいます。当館は、その越中万葉の魅力を知ってもらうとともに、日本の美しいことばと心の原点を保存している『万葉集』について学んでいただく施設です。

当館は、『万葉集』に関する情報収集と発信、調査・研究、万葉にかかわる常設展示・企画展示等を積極的に行い、全国の万葉愛好家ならびに研究者の方々の交流・情報交換を行う研究センターとしての機能を果たしつつ、これまでも多くの学会開催の場を提供するなど外部機構と連携を保ちつつ成長を続けてきました。

2023年春時点で、万葉集関係蔵書約31,647冊、研究論文53,821件を常時閲覧複写(一部を除く)でき万葉研究の発展普及に寄与する態勢を整えています。特に、1万名に及ぶ研究者に関する個人別論文収集は日本一を誇り、高岡に行けば『万葉集』研究のデータはそろうといわれるまでになっており、万葉集研究の中心地としての信頼を獲得しております。日本の古典文化を守る北陸における重要な機関としてその一翼を担っています。

『万葉集』は当時のさまざまな階層の人々や老若男女が歌われている豊かさをもち、現代のわたしたちの誰もが自分に似た気持ちの歌を見出すことができるという特性をもつ歌集です。生徒・学生・研究者・一般の方々を問わず対象として、当館では、学習講座を設け、生涯学習の場として多くの方々に愛していただけるように、そして『万葉集』に触れて多くの方が自分にとって特別な親しみを感じることのできる歌を一首でも多く自分のものとできるようにと願い、来館くださる方にはもちろんのこと、インターネットを通じても最新情報を更新しつつ、その機会を提供できるよう引き続き努力を重ねていきたいと考えています。時代の流れで変りはしても、大伴家持の見た約1,200年前の景がまだまだ残されているこの美しい海辺一帯を訪れ、そして越中万葉の本拠地にある当館にお越しいただいて古代の風を感じていただきたく思います。

令和5年4月1日
高岡市万葉歴史館館長 藤原 茂樹

藤原 茂樹(ふじわら・しげき)

1951年東京都生まれ。1981年慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。神戸山手女子短期大学教授、大谷女子大学教授、慶應義塾大学教授等を経て、現在、慶應義塾大学名誉教授。上代文学会代表理事、同常任理事、古事記学会編集委員などを務めた。 主要著書:『催馬楽研究』・『NHKカルチャーラジオ詩歌を楽しむ 藤原流万葉集の歩き方』・『万葉びとの言葉とこころ―万葉から万葉へ』(坂本信幸名誉館長との共編)など。