まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
007回「妹が家に 伊久里の森の 藤の花」
2020年08月27日

(いもがいへに)
伊久里の森の
藤の花を、
またやって来る春も
ずっとこうして見ていたいものです。
妹(いも)が家に 伊久里(いくり)の森の 藤の花 今来む春 も 常かくし見む
大原高安作(おおはらのたかやす・さく)
僧玄勝伝誦(そう・げんしょう・でんしょう)
(巻17・三九五二)
天平十八年(七四六)八月七日の夜、越中国守館で開かれた宴で、僧玄勝が伝誦した大原高安の歌です。
宴の場では新しい歌を作るほかに、その場に応じた古歌を披露することもありました。
初句「妹が家に」は「行く」を想像させるので、二句目の「伊久里の森」を導いています。
大原高安(おおはらのたかやす)は天武天皇の孫で、越中との関わりは不明ですが、八月の宴なのに藤の歌を紹介していることから、高安が実際に越中の「伊久里の森」で詠んだ歌だから家持に披露したのだろうと想像されます。(関 隆司)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。