まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
065回「あしひきの 山の木末の ほよ取りて」
2021年08月06日

(あしひきの)
山の木々の梢(こずえ)の
寄生木(ほよ)を取って
髪に挿したのは、
千年の寿命を祝う気持ちからだ。
あしひきの 山の木末(こぬれ)の ほよ取りて かざしつらくは 千歳(ちとせ)寿(ほ)くとそ
大伴家持(巻18・四一三六)
天平勝宝(しょうほう)二年(七五〇)正月二日に、越中国庁において家持が催した宴での歌です。元日には国守(こくしゅ)は天皇に代わって、部下である国郡の役人を饗応する習いでした。
「ほよ」は落葉高木に寄生する「寄生木(やどりぎ)」のこと。落葉樹が葉を落としても青々と葉を繁らせているヤドリギは、生命力の強い木として神聖視されました。
花や青葉を折り取り挿頭(かざし・髪に挿すこと)にすると、その力がうつるという感染呪術が(かんせんじゅじゅつ)あります。一年の初めにあたり、特に生命力の強い寄生木を挿頭(かざし)にして長寿を願っためでたい歌です。(坂本信幸)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。