まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
086回「藤波を 仮廬に造り 浦廻する」
2022年02月02日

藤の花で
仮小屋をふいて
浦めぐりをする
人とは知らずに、
海人だと見られているのではなかろうか。
藤波を 仮廬(かりほ)に造り 浦廻(うらみ)する 人とは知らに 海人(あま)とか見らむ
久米継麻呂(くめのつぐまろ)(巻19・四二〇二)
前回の歌(85回)に、「一晩泊まりたい」と歌われたのを意識して、「仮廬」(仮の宿)ということばを使ったのでしょうか。岸辺に咲く藤の花房を仮廬のように見立てて、船をチャーターして水海をめぐる風流。家持とその部下たちの優雅な一日を詠んだ歌です。
初夏の日差しを映してまぶしい湖面、船の中では酒を酌み交わし、お互いに歌を披露しあって、移り変わる景色を楽しんだことでしょう。
作者・久米継麻呂(つぐまろ)についてはよくわかっていませんが、高貴な人々に混じって船遊びをする、得意げな顔が見えてくるようです。(井ノ口史)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。