まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
088回「わが背子が 捧げて持てる ほほがしは」
2022年02月19日

あなたが
捧げて持っておられる
ほおの木の葉は、
まことにそっくりですね、
青いきぬがさに。
わが背子(せこ)が 捧げて持てる ほほがしは あたかも似るか 青き蓋(きぬがさ)
講師僧恵行(こうしそうえぎょう)(巻19・四二〇四)
「ほほがしは」とは、モクレン科の落葉高木で現在の朴(ほお)の木のこと。卵形の大きな葉が放射状に寄り集まっている様子が「青き蓋(きぬがさ)」に似ています。そこに面白みを感じたのでしょう。
蓋とは、貴人たちにさしかけられるパラソルのようなもので、身分によって用いる色が違い、当時従五位上であった家持には使用自体が許されていない色でした。「家持さまが本物の青い蓋(深緑色、即ち一位)を許される未来が、実現するのを願っております」、という親しみをこめた社交辞令でしょう。
作者は、お経の講義をする僧(講師僧)でした。(井ノ口史)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。