まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
089回「渋谿を さしてわが行く この浜に」
2022年02月26日

渋谿(しぶたに)を
目指してわれらが行く
この浜で、
月を飽きるまで眺めよう。
馬をしばらく止めよ。
渋谿(しぶたに)を さしてわが行(ゆ)く この浜に 月夜(つくよ)飽(あ)きてむ 馬しまし止め
大伴家持(巻19・四二〇六)
第83~88回の歌が詠まれた「布勢の水海(ふせのみずうみ)」への遊覧から家持一行が越中の役所のあった高岡市伏木(ふしき)の地へと帰る途中、あまりにも月がきれいだったので、「しばらく馬を止めて眺めよう」と家持が詠んだ歌です。
現在の雨晴(あまはらし)海岸あたりである「渋谿(しぶたに)」を「さして(=目指して)」と歌われていますから、家持がこの歌を詠んだ「浜」とは、現在の氷見市(ひみし)一帯に広がっていた布勢の水海から渋谿に向かう途中の浜。家持が「麻都太要の長浜(まつだえのながはま)」(巻17・三九九一)と詠んだ氷見市島尾(しまお)から雨晴海岸に続く砂浜だったと考えられます。(新谷秀夫)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。