まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
090回「藤波の 茂りは過ぎぬ あしひきの」
2022年03月03日

藤の花の
盛りは過ぎました。
(あしひきの)
山にいるほととぎすよ、
どうして来て鳴かないのだ。
藤波の 茂りは過ぎぬ あしひきの 山ほととぎす などか来鳴(きな)かぬ
久米広縄(くめのひろなわ)(巻19・四二一〇)
家持から贈られた「あなたの庭の藤の繁みで、ホトトギスが鳴くのを知っているよ。どうして知らせてくれないのか」という歌(四二〇七・八歌)に応えた歌です。
この時の長歌(四二〇九)によると、作者は谷に近い高台にある家に住み、朝夕戸外に出てホトトギスを待つ様子が歌われ、「確かに藤は茂っていますが、今年はまだホトトギスの声を聞いていません」と説明しています。そして、この短歌でホトトギスを待ち遠しく思う気持ちは私も同じですと、家持への共感を示しているのです。
家持も広縄も、気の合う者同士一緒にホトトギスの声を聞きたかったのでしょう。(井ノ口史)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。