高岡市万葉歴史館
〒933-0116 富山県高岡市伏木一宮1-11-11
(とやまけん たかおかし ふしきいちのみや)
TEL:0766-44-5511 FAX:0766-44-7335お問い合わせ

まんれきブログ -
日めくり万葉集ブログ-万葉からMANYOへ-

第2回 恋結び(藤原茂樹)

2023年07月10日

 

白たへの 我が紐の緒の 絶えぬ間に 恋結(こひむす)びせむ 逢はむ日までに

(巻十一2854)

 恋人同士が紐をむすび合うことを「恋結び」(2854)といった。解けないよう「真ゆすひ」(4427真結び)に結ぶ。すると、恋人が自分のものでいてくれる。だから、「むすぶ」は、精神性の高い行為である。紐の実体は、「白たへの君が下紐」(3181)楮でつくられた白紐や、「高麗錦の結びも解き放けず斎ひて待てど」(2975)舶来の絹紐、とわずかな消息しかない。男女の秘事は証拠が出にくい。

大き海の 底を深めて 結びてし 妹が心は 疑ひもなし

(巻十二3028)

 大きな海の底のように深く結んで相手を信じる。このばあいのむすびは、深い信頼をもたらす。心を結ぶという、目に見えないものを歌が具体的にとらえようとしている。現代はもう恋結びはしなくなった。恋結びではないが、宮中の鎮魂祭では毎年「たまのお結び」をする。身体と魂とを「命の糸」で繋ぐ神事である。失われた古代の黙契を想いみるようだ。

家(いは)の妹(いも)ろ 我(わ)を偲ふらし 真結(まゆす)ひに 結(ゆす)ひし紐の 解(と)くらく思へば

(巻二十4427 昔年の防人が歌)

 

白たへの 君が下紐 我さへに 今日結びてな 逢はむ日のため

(巻十二3181)

(藤原茂樹)

  • 「日めくり万葉集ブログ-万葉からMANYOへ」は、毎月10・20・30日に投稿予定です。