まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
033回「みなと風 寒く吹くらし 奈呉の江に」
2020年12月18日

河口の風が
寒々と吹いているらしい。
奈呉の江で、
夫婦で呼び合いながら、
鶴がたくさん鳴いている。
みなと風 寒く吹くらし 奈呉の江(なごのえ)に 夫婦(つま)呼びかはし 鶴(たづ)さはに鳴く
大伴家持(巻17・四〇一八)
天平二十年正月二十九日、太陽暦でいえば三月七日に作られた歌です。
平城京(現在の奈良市)では、太陽の光に早春のぬくもりが感じられる頃ですが、越中では、まだまだ寒さが続いています。冷たく澄んだ空気の中、鶴が鳴き交わす声が聞こえてきました。
『万葉集』では、旅のつらさや寂しさを実感させるきっかけとして鳥の鳴き声が歌われています。鶴の声を耳にした家持の心の中でも、都への恋しさがますます強くなっていったのでしょう。この次の回(34)の歌にも、同じ気持ちが歌われています。(井ノ口史)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。