まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
041回「珠洲の海に 朝開きして 漕ぎ来れば」
2021年02月18日

珠洲の海に
朝早く舟を出して
漕いで来ると、
長浜の浦には
もう月が照り輝いていた。
珠洲(すず)の海に 朝開(あさびら)きして 漕ぎ来(く)れば 長浜の浦に 月照りにけり
大伴家持(巻17・四〇二九)
能登半島の先端、珠洲(すず)から越中国府へ帰るための一日がかりの船旅を歌っています。
家持は越中能登をめぐる長い旅のはてに、珠洲までやって来ました。あとは船で帰るだけです。珠洲の海を朝、船出して、陸地づたいに国府近くまで富山湾を南下したのでしょう。
歌には、一日をかけた船旅のはてに、長浜の浦で仰ぎ見た月が詠まれています。朝の珠洲と、月がのぼる夕刻の長浜をならべて、長い時間と広い空間を詠み込んでいるのです。「長浜の浦」は、渋谿(しぶたに)の崎(高岡市の雨晴(あまはらし)海岸)から氷見(ひみ)にかけての海岸線と考えられています。(垣見修司)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。