高岡市万葉歴史館
〒933-0116 富山県高岡市伏木一宮1-11-11
(とやまけん たかおかし ふしきいちのみや)
TEL:0766-44-5511 FAX:0766-44-7335お問い合わせ

まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~

040回「之乎路から 直越え来れば 羽咋の海」

2021年02月11日

之乎路(しおじ)の山道を

まっすぐに越えてくると、

羽咋(はくい)の海は

今まさに朝凪(あさなぎ)している。

船の櫂(かい)でもあったらよいのに。

 

 

 

 

 

 

 

之乎路(しをぢ)から 直越え来(ただこえく)れば 羽咋(はくひ)の海 朝なぎしたり 船梶(ふねかぢ)もがも

大伴家持(巻17・四〇二五)

 

 天平二十年(七四八)春の「出挙(すいこ)」(36回)の旅は、富山県内を東へ進んだあと、いったん越中国の役所のあった高岡市伏木(ふしき)に戻ってから、あらためて能登へと出かけました。

 能登への旅の最初に家持は、いまも石川県羽咋(はくい)市に残る氣多大社(けたたいしや)に参詣したあと、海辺を進んでいる時にこの歌を詠みました。

 しかし、歌は「之乎路(しおじ)」の山道を越えている時の歌となっています。おそらく「羽咋の海」の海辺を進んでいた家持は、山道で峠に立った時に、朝凪で波ひとつ無い静かな水面に朝日が映えるのを見た時の感動を思い出して、この歌を詠んだのでしょう。(新谷秀夫)

 

千里浜なぎさドライブウェイ(2009年高岡市万葉歴史館撮影)

【さらに詳しく知りたい方へ】

高岡市万葉歴史館編

『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』

笠間書院・2014年刊

フルカラーA5判・128頁・定価1000円

 

 

※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。