まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
043回「波立てば 奈呉の浦廻に 寄る貝の」
2021年03月03日

波が立つたびに
奈呉(なご)の浦あたりに
寄ってくる貝のように、
絶え間なく恋しているうちに、
年月が経ってしまいました。
波立てば 奈呉の浦廻(うらみ)に 寄る貝の 間なき恋にそ 年は経(へ)にける
田辺福麻呂(たなべのさきまろ)(巻18・四〇三三)
42回の歌に続いて田辺福麻呂が詠んだ歌です。
42の歌で、おだやかな「奈呉(なご)の海」に波が立たないか見に行ってきますと詠んだのを受けて、その波が立つたびに「浦廻(うらみ)(岸辺あたり)」に近づいてくる貝と同じように、ずっとあなたのそばに近づきたいと恋しく思って何年も経ってしまいましたと歌っています。
福麻呂と大伴家持は、都にいたときに顔見知りだったのでしょう。越中に赴任していた家持と久しぶりに会えたので、貝が岸辺に近づくようにやっと家持のいる越中にやってくることができたと歌って、その喜びを伝えたのです。(新谷秀夫)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。