まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
051回「ほととぎす こよ鳴き渡れ 灯火を」
2021年04月30日

ほととぎすよ、
ここを鳴いて通っておくれ。
灯火を
月の光に見立てて、
せめてその姿でも見たいものだ。
ほととぎす こよ鳴き渡れ 灯火(ともしび)を 月夜(つくよ)になそへ その影も見む
大伴家持(巻18・四〇五四)
奈良の都から、歌人の田辺福麻呂(たなべのさきまろ)がやって来ました。大伴家持や久米広縄(くめのひろなわ)は歓迎の宴をもうけ、布勢の水海(ふせのみずうみ)に案内してもてなします。福麻呂は数日間滞在して、晩春の越中の自然を楽しみました。
もうすぐ、ほととぎすが来て鳴く初夏の季節になります。
家持たちは越中のほととぎすが鳴く声を、明日には都に帰ろうという福麻呂にも聞かせたいと願って、このあたりを鳴きながら飛んでおくれと、まだ見ぬほととぎすに呼びかけています。そして、月の出にはまだ時間があるので、かわりに灯火で、その姿を見たいと歌っているのです。(垣見修司)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。