まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
053回「二上の 山に隠れる ほととぎす」
2021年05月15日

二上(ふたがみ)の
山にこもっている
ほととぎすよ、
今すぐ鳴いてくれないか。
わが君にお聞かせしたい。
二上(ふたがみ)の 山に隠(こも)れる ほととぎす 今も鳴かぬか 君に聞かせむ
遊行女婦土師(うかれめ・はにし)(巻18・四〇六七)
天平二十年(七四八)四月一日(太陽暦で五月六日)に、部下である久米広縄(くめのひろなわ)の館でおこなわれた宴会で詠まれた歌です。
この年は、翌日の四月二日が立夏(りっか)でした。大伴家持が生まれ育った都では立夏の日にほととぎすがやってきて鳴きはじめたので、越中でも「今も鳴かぬか(今すぐ鳴いてくれないか)」と歌ったのでしょう。
この歌の作者である土師(はにし)は、「遊行女婦(うかれめ)」と呼ばれていた人です。若いときに都で働いていたも多く、教養や知識もあり、その場にあった歌を詠んだりなどして宴会を盛り上げる役割を果たしていました。(新谷秀夫)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。