まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
054回「しなざかる 越の君らと かくしこそ」
2021年05月21日

(しなざかる)
越の国のあなたがたと、
こうやって
柳をかずらにして
楽しく遊ぼう。
しなざかる 越(こし)の君らと かくしこそ 柳かづらき 楽しく遊ばめ
大伴家持(巻18・四〇七一)
前後の歌の日付から考えて、この歌は天平二十一年(七四九)の作です。
巻19・四二三八の左注に「越中の風土に、梅花柳絮(ばいくゎりうしよ)三月にして初めて咲くのみ」とあるので、「柳かづらく」(柳を縵にする)と歌われたこの歌の時節は、三月上旬だったと思われます。
前の四〇七〇歌の左注によると、先の国師(こくし)の従僧(じゅうそう)であった清見(せいけん)という者が奈良の都に帰るに際し、家持が催した送別の宴での作です。
「しなざかる」は「越」に掛かる枕詞。「かくしこそ」とその現場の様子を示しているところに、家持が越の人々と楽しみを共有していることがよく分かります。(坂本信幸)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。