高岡市万葉歴史館
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越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~

059回「英遠の浦に 寄する白波 いや増しに」

2021年06月26日

阿尾の浦(あおのうら)に

うち寄せる白波は、

いよいよひどく、

ひっきりなし立ってしきりに寄せて来る。

あゆの風が激しいからだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 英遠の浦(あをのうら)に 寄する白波 いや増しに 立ちしき寄せ来(く) あゆをいたみかも

大伴家持(巻18・四〇九三)

 

 天平感宝元年(七四九)五月十日頃(太陽暦の六月初旬)、家持は阿尾の浦に訪れました。見ると阿尾の浦にはしきりに白波が打ち寄せています。それを、海風が強いからかと推量したのです。

 「あゆ」海から陸に向かって吹く風を意味する越中方言で、『万葉集』ではいずれも大伴家持が詠んでいます。

 「英遠の浦(あをのうら)」は現在の氷見市(ひみし)阿尾付近の海。弓なりに長く続く浜に、内陸の山から連なるようにしてせり上がった断崖が突き出て、その白い岩肌はとても目を引きます。天然の要害として中世には阿尾城も築かれました。

 家持も、青い海に浮かぶ白い絶壁が印象に残ったのでしょうか。(垣見修司)

 

佐竹清「英遠の浦」(高岡市万葉歴史館蔵)

【さらに詳しく知りたい方へ】

高岡市万葉歴史館編

『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』

笠間書院・2014年刊

フルカラーA5判・128頁・定価1000円

 

 

※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。