高岡市万葉歴史館
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越中万葉歌を読む

060回「紅は うつろふものそ 橡の」

2021年07月03日

紅(くれない)染めは

色褪(あ)せやすいもの。

ドングリ染めの

着古した衣に、

やはりかなうはずがない。

 

 

 

 

 

 

 

紅(くれなゐ)は うつろふものそ 橡(つるはみ)の なれにし衣(きぬ)に なほ及(し)かめやも

大伴家持(巻18・四一〇九)

 

 大伴家持の部下の尾張少咋(おわりのおくい)という史生(ししょう・ヒラの事務官)は、都に妻がいながら左夫流児(さぶるこ)という名の遊行婦女(うかれめ・宴会場などにいる接待係の女性)に夢中になってしまいました。そこで家持が、少咋に注意して諭すために詠んだ歌です。

 「紅(くれない)染め」はベニバナの花びら染めのこと。花やかな紅色に染まりますが、すぐに退色するので、浮気相手の女性にたとえています。

 それに対して「橡(つるばみ・ドングリ)染め」は、黒や茶色の地味な色ですが変色しません。慣れ親しんだ妻は、橡染めの布のようなもの、絶対にかなわないよ、というのです。(田中夏陽子)

 

左は紅花による紅染め(色が褪せている)、右はドングリによるつるばみ染め

【さらに詳しく知りたい方へ】

高岡市万葉歴史館編

『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』

笠間書院・2014年刊

フルカラーA5判・128頁・定価1000円

 

 

※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。