まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
063回「天の川 橋渡せらば その上ゆも」
2021年07月24日

天の川に
橋を渡してあったら、
その上を通ってでも
渡って行かれるだろうに、
秋でなくても。
天の川 橋渡せらば その上(へ)ゆも い渡らさむを 秋にあらずとも
大伴家持(巻18・四一二六)
織姫と彦星をへだてる天の川。渡ることができるのは年に一度、七夕の夜だけです。離れて暮らす寂しさは、単身赴任中の家持にも深く共感できたことでしょう。
越中にいる自分が都の妻のもとを訪ねるには、いくつもの山を越えなければならない。だからこそ逢わずにいるが、彦星なら川に橋がかかればいつでも会いに行けるのに、なぜ一年に一度の逢瀬で我慢しているのだろう、と想像しているのです。
天平勝宝元年(七四九)七月七日の夜に、天の川を仰ぎ見て作ったと記録されています。この時、家持は三十二歳でした。(井ノ口史)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。