まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
064回「雪の上に 照れる月夜に 梅の花」
2021年07月30日

雪の上に
照り映える月が美しい夜に、
梅の花を
折って贈ってやりたいと思うような、
かわいい子がいたらなあ。
雪の上(うへ)に 照れる月夜(つくよ)に 梅の花 折りて贈らむ 愛(は)しき子もがも
大伴家持(巻18・四一三四)
天平勝宝(しょうほう)元年(七四九)十二月(太陽暦の一月中旬~二月中旬)、家持が「雪・月・梅の花」という三つの素材を同時に詠むことに挑戦した歌です。
家持は別のところで、越中では梅の花は三月になってやっと咲きはじめると言っています(巻19・四二三八)。すると、この歌を詠んだときにはまだ梅の花は咲いてなかった可能性が高いと思います。
題詞には宴席で詠んだ歌だと記されています。おそらく、白い雪が木に降り積もっているさまを白い梅が咲いたように見立てて歌を詠むことを楽しむ宴会が開かれたときに詠んだ歌なのでしょう。(新谷秀夫)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。