まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
068回「わが園の 李の花か 庭に散る」
2021年08月27日

私の園の
すももの花が
庭に散るのだろうか。
それともうす雪が
まだ残っているのであろうか。
わが園の 李の(すもも)花か 庭に散る はだれのいまだ 残りたるかも
大伴家持(巻19・四一四〇)
「天平勝宝二年三月一日の暮に(ゆふへ)、春苑桃李(しゅんゑんたうり)の花を眺矚(てうしょく)して作る二首」のうちの第二首目。
原文三句目「庭尓落」を「庭に降る」と訓んで、
私の園の李の花だろうか。それとも、庭に降った薄雪がまだ消え残っているのだろうか
と二句切れに解する説もあります。「落」の字はチルともフルとも訓めます。
しかし、家持の父旅人に
我(わ)が園に 梅の花散る ひさかたの 天(あめ)より雪の 流れ来るかも
(巻5・八二二)
という園に散る花を歌った同趣の詠があることから考えて、三句切れと解すべきと考えられます。(坂本信幸)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。