まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
070回「春の日に 萌れる柳を 取り持ちて」
2021年09月12日

春の日の光のなかに
芽をふいている柳の枝を
手に取り持って見ると、
奈良の都の大路が
思い出される。
春の日に 萌(は)れる柳を 取り持ちて 見れば都の 大路(おほち)し思ほゆ
大伴家持(巻19・四一四二)
題詞(だいし)に「二日に柳黛(りうたい)を攀(よ)ぢて京師(みやこ)を思ふ歌一首」とあり、天平勝宝二年(七五〇)三月二日の作。
「黛」は眉墨(まゆずみ)の意ですが、ここでは新柳の葉を美人の眉に見立てた表現で、漢詩に倣(なら)った趣向です。
平城京の朱雀大路(すざくおおじ)は、幅約70メートルあり、その街路樹には柳が植えられていました。一条から九条までの大路でも16メートルから36メートルあり、大路は都を代表する景観でした。そこを多くの柳眉(やなぎまゆ)の美女が往来していたのです。
巻十・一八五三の「梅の花 取り持ちて見れば 我(わ)がやどの 柳の眉し 思ほゆるかも」を発展させた歌です。(坂本信幸)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。