高岡市万葉歴史館
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越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~

074回「あしひきの 八つ峰の雉 鳴きとよむ」

2021年10月22日

(あしひきの)

峰々のきじが

鳴き立てている

夜明けの霞を見ていると、

せつなく悲しいなあ。

 

 

 

 

 

 

 

あしひきの 八つ峰(やつを)の雉(きぎし) 鳴きとよむ 朝明(あさけ)の霞(かすみ) 見れば悲しも

大伴家持(巻19・四一四九)

 

 「暁に(あかとき)鳴く雉を(きぎし)聞く歌二首」とある二首目。

 雉(きじ)は集中八首に詠まれています。一首目に、

杉の野に さ躍(をど)る雉 (きぎし) いちしろく 音(ね)にしも鳴かむ 隠り妻(こもりづま)かも

(巻19・四一四八)

と、人目を忍ぶ仲の妻である「隠り妻」が詠まれていることからすると、雉が鳴き立てる夜明けの霞を見て悲しく思うのは相聞的情調といえます。

 鳥の声と「見れば悲しも」とを組み合わせた歌はほかに一首、

朝烏 (あさがらす) 早くな鳴きそ 我(わ)が背子(せこ)が 朝明(あさけ)の姿 見れば悲しも

(巻12・三〇九五)

という相聞歌があり、それに学んだのでしょう。(坂本信幸)

 

【さらに詳しく知りたい方へ】

高岡市万葉歴史館編

『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』

笠間書院・2014年刊

フルカラーA5判・128頁・定価1000円

 

 

※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。