まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
080回「大夫は 名をし立つべし 後の代に」
2021年12月13日
大夫(ますらお)たる者は
名を立てなければならない。
のちの世に
伝え聞く人も、
ずっと語り伝えてくれるように。
大夫(ますらを)は 名をし立つべし 後の代(のちのよ)に 聞き継(つ)ぐ人も 語り継(かたりつ)ぐがね
大伴家持(巻19・四一六五)
「勇士(ゆうじ)の名を振(ふ)るはむことを慕(ねが)ふ歌一首」と題する長歌の反歌です。
左注に「山上憶良臣の作る歌に追和(ついわ)す」と見え、巻6・九七八の山上憶良の沈痾(ぢんあ)(重病)の時の歌、
士(をのこ)やも 空(むな)しくあるべき 万代(よろづよ)に 語り継(かたりつ)ぐべき 名は立てずして
山上憶良(巻6・九七八)
に唱和(しょうわ)した歌であることがわかります。
ただし、憶良が「士(をのこ)」と、官人としての英名を挙げることを歌うのに対し、家持は「ますらを」と、勇敢な武人としての英名を歌う点で相違します。
長歌にも、
・・・梓弓(あづさゆみ) 末振(すえふ)り起こし 投矢(なげや)持ち 千尋(ちひろ)射渡(いわた)し 剣大刀(つるぎたち) 腰に取り佩(は)き・・・
大伴家持(巻19・四一六四)
とあり、武門大伴氏の名の継承の意識がうかがえます。(坂本信幸)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。