高岡市万葉歴史館
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越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~

079回「磯の上の つままを見れば 根を延へて」

2021年12月05日

海辺の岩の上の

つままを見ると、

根を長く張っていて、

年を重ねているらしい。

神々しくなっている。

 

 

 

 

 

 

 

磯(いそ)の上の つままを見れば 根を延(は)へて 年深からし 神(かむ)さびにけり

大伴家持(巻19・四一五九)

 

 題詞(だいし)に「渋谿(しぶたに)の崎に過(よき)り、巌の(いはほ)上の樹を見る歌一首 樹の名は都万麻(つまま)」とあります。ツママは、クスノキ科の常緑高木の椨(たぶのき)のこと。主に沿岸部に生育し、奈良の都では見ない樹です。都人の知らない樹だから小注で名を記したのです(集中一例のみ)。

 題詞の「」の字は、「過ハ訪也」と漢籍にあり、たんに通過するのではなくヨキル(わざわざ訪れる)意。渋谿の崎(高岡市北部の雨晴海岸)には、有名なツママの木が生えていたのでしょう。

 巌の上に生えている生命力溢れる神聖なツママを讃美し、それを見ることは、見る者の生命力を強くする行為でした。(坂本信幸)

 

 

長坂の大いぬくす(天然記念物) 富山県氷見市

つまま小公園富山県高岡市太田(岩崎)の江戸時代の歌碑。1858年に大田村伊勢領の肝煎(村長)宗九郎が建立したとされています。

 

【さらに詳しく知りたい方へ】

高岡市万葉歴史館編

『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』

笠間書院・2014年刊

フルカラーA5判・128頁・定価1000円

 

 

※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。