まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
078回「年のはに 鮎し走らば 辟田川」
2021年11月26日
毎年
鮎が躍(おど)るころになったら、
辟田河で
鵜をいっぱい使って、
川の瀬をたどって行こう。
年のはに 鮎し走らば 辟田河(さきたがは) 鵜八つ潜け(うやつかづけ) て 川瀬(かはせ)尋(たづ)ねむ
大伴家持(巻19・四一五八)
天平勝宝(てんぴょうしょうほう)二年(七五〇)三月八日(太陽暦の四月二二日)の大伴家持の歌です。題詞に「鸕(う)を潜(かづ)くる歌」とある長歌一首(四一五六)、短歌二首のうちの最後の歌です。
「年のは」は毎年の意。「鵜八つ潜けて」の「八」は、数の多いことを示します。カヅクは潜(もぐ)らせることです。現在では長良川の鵜飼いが有名ですが、越中では家持の時代から鵜飼いをして鮎を捕る漁が行われていたのです。
長歌には「篝さし(かがりさし) なづさひ行けば」と、篝火を焚いて水に濡れながら行くさまが歌われているので、夜に行った「徒歩鵜(かちう)」と呼ばれる漁法だったと考えられます。(関隆司)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。