まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
082回「妹に似る 草と見しより わが標めし」
2022年01月06日
あなたに似た
草だと見た時から、
わたしが印(しるし)をつけておいた
野辺の山吹を、
いったい誰が手折(たお)ったのでしょうか。
妹(いも)に似る 草と見しより わが標(し)めし 野辺(のへ)の山吹 誰(たれ)か手折(たを)りし
大伴家持(巻19・四一九七)
「京人(みやこひと)に贈る歌二首」とある第一首。
左注によってその京人は「留女(りうじょ)の郎女」(留守中の家を守る女性)で、家持の妹であること、歌は妻の坂上大嬢(さかのうえのおおいらつめ)に頼まれて家持が代作したことが分かります。
先に妹から大嬢に贈って来た、
山吹の 花取り持ちて つれもなく 離(か)れにし妹(いも)を 偲(しの)ひつるかも
大伴家持の妹(巻19・四一八四)
に対する答歌です。大嬢は天平勝宝元年十一月頃には越中に下向(げこう)していたと考えられます。
下二段動詞「標(し)む」は、自分の占有であることを示すしるしをすること。恋歌仕立てで妹に対する愛情を示した歌です。(坂本信幸)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。