まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
087回「家に行きて 何を語らむ あしひきの」
2022年02月12日

家に帰って
何を土産話にしようか。
(あしひきの)
山にいるほととぎすよ、
一声だけでも鳴いてくれ。
家に行(ゆ)きて 何を語らむ あしひきの 山ほととぎす 一声(ひとこゑ)も鳴け
久米広縄(くめのひろなは)(巻19・四二〇三)
『万葉集』には、ホトトギスの声を聞くと、過去を思い出すという歌が多くあります。それに対して、この歌では「一声」ということばを使っているところが個性的です。平安時代以降、よく使われるようになる和歌のことばですが、その最初の例になるようです。
作者は、大伴池主(いけぬし)の次に越中掾(えっちゅうのじょう・地方官の三等官)となった人物。九首の歌を残しており、そのうち五首がホトトギスの歌です。
他にも過去の歌を「伝読」したり(巻19 ・四二二七・八)、「伝誦(でんしょう)」したりするなど(巻19 ・四二三五)、歌への興味を持っていたことがわかります。(井ノ口史)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。