まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
094回「わがやどの 萩咲きにけり 秋風の」
2022年03月30日

わが家の庭の
萩が咲いたよ。
秋風が
吹いてくるのを待っていたら、
待ちきれないからだろうか。
わがやどの 萩咲きにけり 秋風の 吹かむを待たば いと遠みかも
大伴家持(巻19・四二一九)
天平勝宝二年(七五〇)六月十五日(太陽暦で七月二十六日)に、家持が「萩の早花(はつはな・初めて咲いた花)」を見つけて、秋風が吹くのを待ちきれずに咲いてしまった、ちょっとおっちょこちょいの萩を、おもしろいと思って詠んだ歌です。
「萩」という字は日本で作られた国字で、見てもわかるように、「秋」を代表する植物です。野に咲いている萩も愛されたようですが、家持が「わがやどの萩」と詠んでいるように、早くから庭に植えて楽しまれていました。そのため、万葉集には約一四〇首もの歌に詠まれ、もっとも多くの歌に詠まれた植物なのです。(新谷秀夫)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。