まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
097回「降る雪を 腰になづみて 参り来し」
2022年04月23日
降り積もる雪に
雪に腰まで埋もれて
参上した
苦労の甲斐がありましたね、
年の初めに。
降る雪を 腰になづみて 参り来し(まゐりこし) 験(しるし)もあるか 年の初めに
大伴家持(巻19・四二三〇)
天平勝宝三年(七五一)正月三日に介(すけ・次官)内蔵忌寸縄麻呂(くらのいみきなわまろ)の館に集まって宴を楽しんだ時の歌です。
「腰になづむ」はほかに、「…夏草を 腰になづみ いかなるや 人の児(こ)故(ゆゑ)そ 通はすも我子(あご)…」(巻13・三二九五)と見え、障害物に阻まれ難渋する意ですが、「参り来」「通ふ」などの語を伴い、障害を乗り越えてでも進行する意を表します。
障害物があっても行こうとするのは、それだけ魅力のあるところだということで、この歌は宴の主人縄麻呂に敬意を表した客人家持の挨拶歌として機能しています。(坂本信幸)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。