まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
098回「石瀬野に 秋萩しのぎ 馬並めて」
2022年04月30日

石瀬野で
秋萩を踏み散らし、
馬を並べての
初鳥狩もしないで
別れなければならないのか。
石瀬野(いはせの)に 秋萩しのぎ 馬並(な)めて 初鳥狩(はつとりがり)だに せずや別れむ
大伴家持(巻19・四二四九)
天平勝宝三年(七五一)八月四日(太陽暦九月二日)の大伴家持の歌です。
家持の少納言転任が決まり、都へ向けて出発する前日に、上京中の久米広縄(くめのひろなわ)の留守の館に残した悲別の歌のうちの一首です。
「しのぐ」は押し靡(なび)かせる意、「初鳥狩」はその年の秋初めて行う鷹狩(たかがり)のことです。「石瀬野」は、高岡市石瀬(いしぜ)や富山市東岩瀬(いわせ)町一帯と考える説があります。二句目は長い間「秋萩しぬぎ」とよまれてきましたが、国語学の研究成果によって、現在の読み方が一般的となりました。(関隆司)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。