高岡市万葉歴史館
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まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~

100回「玉桙の 道に出で立ち 行く我は」

2022年05月17日

(たまほこの)

道に旅立ちして

行くわたしは、

あなたの治績を

背負って行こう。

 

 

 

 

 

 

玉桙(たまほこ)の 道に出(い)で立ち 行(ゆ)く我(われ)は 君が事跡(ことと)を 負(お)ひてし行(ゆ)かむ

大伴家持(巻19・四二五一)

 

 八月五日の午前四時頃、家持は越中国庁を後にして都に旅立ちました

 次官以下の諸官人が見送る中、射水郡の大領(だいりょう・長官)の安努君広島(あののきみひろしま)の門前では林中に送別の宴が用意されていました。その宴で、内蔵忌寸縄麻呂(くらのいみきなわまろ)が餞別の盃を捧げて歌を歌いました。この歌はそれに和した歌です。

 コトドは『古事記』(上巻)に「事戸(ことど)を渡す」とあるコトドと同じく「離別(ワカレ)の辞(コトバ)」とする本居宣長(もとおりのりなが)の説もありますが、「功労ノ事迹(じせき)」とする契沖(けいちゅう)の説に従います。

 後に残る部下の労をねぎらい、その功績を都に伝えようという挨拶の歌です。(坂本信幸)

 

 

大島秀信「越中との別れの宴」・岩倉政治「大伴家持」挿絵

大島秀信「越中との別れの宴」・岩倉政治「大伴家持」挿絵

 

 

【さらに詳しく知りたい方へ】

高岡市万葉歴史館編

『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』

笠間書院・2014年刊

フルカラーA5判・128頁・定価1000円

 

 

※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。