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第23回 草木の縵(かずら)(藤原茂樹)

2024年05月03日

はね縵(かづら)

今する妹(いも)が

うら若み

笑(ゑ)みみ怒(いか)りみ

付けし紐解(ひもと)く

(巻・十一・2627作者未詳)

〔現代語訳〕

羽飾りのついた縵を いま頭に巻いている娘は 初々しく世馴れないものだから 笑ってみたり すねて怒ってみたりして つけた紐をほどいてゆく

 

 縵(かずら)を冠(かぶ)るのは、神の前にでる姿。はたから見ると祭りに奉仕している姿の標識となる。 

 縵の材料は、名の通り蔓性植物で、照葉や花や鳥の羽根や実などが加わることもあった。この歌のはね縵は成女式の折とみられる。

 花縵4153・桜の縵1429・青柳の縵817・梅柳の縵4238・菖蒲草の縵423・花橘の縵4101や海藻の蘰3790も作られた。稲穂の蘰1624は贈物。百合の縵4086は宴の席に客に献げられているのは、神祭りの形式をまねて宴が成立している心理による。後の島台の先駆けのようなもの。

 古事記神話ではイザナキ神は山葡萄の黒御縵(くろみかずら)をし、播磨国風土記には景行天皇の弟縵(おとかずら)が輝いたとある。神や古代の天皇が旅に携行するのも縵であった。

 万葉の時代は、人のこころと草木がつながっていた記憶をもつので、体を草装する習俗が濃く残っていた。渡来植物ではあるがしろつめ草を冠にして遊ぶ女の子のなつかしい春の笑顔が輝くのも、神の世からのつながりなのだろう。

 (藤原茂樹)

 

※島台(しまだい)…州浜(すはま)形などともいい、婚礼などのときに飾る縁起物。

 

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