高岡市万葉歴史館
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まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~

003回「秋の田の 穂向 見がてり わが背子が」

2020年08月13日

秋の田の

稲穂の実りぐあいを

見回りかたがた、

あなたが

どっさりと手折って来てくださったのですね。

このおみなえしの花は。

 

 

 

 

 

 

 

秋の田の 穂向(ほむき)見がてり わが背子(せこ)が ふさ手折(たを)り来(け)る をみなへしかも

大伴家持 (巻17・三九四三)

 

 天平十(てんぴよう)八年(七四六)六月二十一日、大伴家持は越中守(えつちゆうのかみ)に任ぜられました。

 この歌は題詞(だいし)に「八月七日の夜に、守大伴宿祢家持(かみおほとものすくねやかもち)が館(むろつみ)に集(つど)ひて宴する歌」と記されていて、おそらく、着任後初めて催した越中での宴における作と思われます。

 八月七日は太陽暦でいうと八月三十一日。秋を代表する七種(ななくさ)の花の一つの女郎花(おみなえし)が咲き誇っている頃です。

 女郎花は家持の好きな花です。先に赴任していた一族の一人大伴池主(おおとものいけぬし)は、その女郎花を手土産に手折って宴にやって来ました。この歌は、その心づかいに感謝して詠(うた)った宴の主人家持の歓迎の挨拶歌です。(坂本信幸)

 

 

【さらに詳しく知りたい方へ】

高岡市万葉歴史館編

『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』

笠間書院・2014年刊

フルカラーA5判・128頁・定価1000円

 

 

※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。