まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
014回「春の花 今は盛りに にほふらむ」
2020年09月20日
春の花は、
今を盛りと
咲きにおっていることでしょう。
手折って髪に挿す
手力があったらよいのに。
春の花 今は盛りに にほふらむ 折りてか ざさむ 手力(たぢから)もがも
大伴家持(巻17・三九六五)
越中に赴任して最初の春、家持は死をも覚悟するほどの大病を患いました。
家族から遠く離れた異郷の地で数十日も苦しみ、体力気力ともに衰弱した家持は、戸外に出て春を楽しむこともできずに居ました。
そんな心情を漢文の序と二首の悲歌に作り、赴任前からの旧知の友である大伴池主に贈りました。
家持より数歳年上の大伴池主は、それに長歌一首反歌二首の作品で答え、二人は、天平十九年(七四六)二月二十九日(現在の四月中旬)から三月五日までの間に、数日間のうちに漢詩二編・長歌二首・短歌十一首もの歌をやり取りしました(連載14~19回も参照ください)。この歌はその冒頭歌です。(田中夏陽子)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。