高岡市万葉歴史館
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まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~

017回「山吹の 茂み飛び潜く 鶯の」

2020年09月30日

山吹の

茂みを飛びくぐって鳴く

鶯の

声を聞いていられる

あなたは、なんとうらやましいことか。

 

 

 

 

 

 

 

山吹の 茂み飛び潜(く)く 鶯(うぐひす)の 声を聞くらむ 君はともしも

大伴家持(巻17・三九七一)

 

 三月二日の池主の見舞いの歌に応えた、家持の「更に贈る歌」長歌一首反歌三首の第二反歌(はんか)。歌を受け取ってすぐの三月三日に作っています。

 第一反歌では、

あしひきの 山桜花 一目だに 君とし見てば 我恋ひめやも

大伴家持(巻17・三九七〇)

(あしひきの)山に咲く桜の花を一目だけでもあなたと一緒に見られたならば、わたしはこんなに恋いこがれることなどありましょうか。

と、池主の山桜を歌った一首目に応じ、この歌では山吹を歌った二首目に応じています。

 「飛び潜(く)く」の「潜く」は、くぐり抜けるの意。木々の間を飛びくぐる鳥の習性をとらえた表現です。集中全五例詠まれているすべてが家持の詠んだ例で、家持の好んだ表現といえます。「ともし」は、ここではうらやましいの意です。(田中夏陽子)

 

 

【さらに詳しく知りたい方へ】

高岡市万葉歴史館編

『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』

笠間書院・2014年刊

フルカラーA5判・128頁・定価1000円

 

 

※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。