まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
018回「山吹は 日に日に咲きぬ うるはしと」
2020年10月02日

山吹は
日ごとに咲いています。
すばらしいと
わたしが思うあなたのことが、
しきりに恋しく思われてなりません。
山吹は 日に日に咲きぬ うるはしと 我(あ)が 思(も)ふ君は しくしく思ほゆ
大伴池主(いけぬし)(巻17・三九七四)
家持の前歌「更に贈る歌」(三九六九~三九七二)に応じた池主の漢詩と、長歌一首反歌二首の第一反歌。左注によると三月五日の作です。
当時は同性同士が、恋歌仕立てで起居を問うことが行われました。
家持が三九七二歌に、
出(い)で立たむ 力をなみと 隠(こも)り居(ゐ)て 君に恋ふるに 心利(こころど)もなし
(大伴家持 巻17・三九七二)
出かけてゆく元気がないと引きこもってばかりいて、あなたを恋しく思っていると心が落ち着きません。
と恋歌仕立てで歌ったのを受けて、「うるはしと 我が思ふ君は しくしく思ほゆ」と歌っているのです。
「うるはし」は、おおむね尊敬の感情がこもった讃美の気持をあらわすことばです。この歌では、山吹が日に日に咲く様子に、家持を毎日大切に思う気持ちを重ねています。(田中夏陽子)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。