まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
020回「春花の うつろふまでに 相見ねば」
2020年10月07日

春花が
散り果てるまで
逢っていないので、
月日を指折り数えて、
いとしい妻は待っていることでしょう。
春花(はるはな)の うつろふまでに 相見(あひみ)ねば 月日数(つきひよ)みつつ 妹(いも)待つらむそ
大伴家持(巻17・三九八二)
題詞(だいし)に「恋緒(れんしよ)を述ぶる歌一首 并(あは)せて短歌」とある長歌一首反歌四首の最後の一首。左注によると天平十九年(七四七)三月二十日(太陽暦五月七日)の作です。
この年家持は税帳使(ぜいちようし)として一旦(いったん)都に帰っています。長歌(三九七七)に「ほととぎす 来鳴(きな)かむ月に いつしかも 早くなりなむ」とあることからすると、四月に上京することがこの頃決まったのでしょう。そこで、急に都に残した妻への恋情がつのって歌を詠んだのです。
前月二十日には家持は病に臥(ふ)し、上京どころではありませんでした。病も癒(い)えて上京できる喜びの歌です。(坂本信幸)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。