まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
022回「玉くしげ 二上山に 鳴く鳥の」
2020年10月16日

(たまくしげ)
二上山に
鳴く鳥の
声の恋しい
時がやってきた。
玉くしげ 二上山(ふたがみやま)に 鳴く鳥の 声の恋しき 時は来(き)にけり
大伴家持(巻17・三九八七)
二上山を讃美した長歌「二上山の賦(ふ)」に添えられた反歌二首の第二首目。
「玉くしげ」は二上山の枕詞。二上山は、家持が勤務していた越中国庁の背後の山です。中世以降に、西峰に山城が築かれたため、家持が見た二上山と今の姿は異なるかもしれません。
「鳴く鳥」はホトトギスのこと。家持の大好きな鳥で、奈良の都では立夏の日には鳴くのが常識でした。
しかし、この歌の作られた年の立夏の日(三月二十五日)、越中ではその鳴き声を聴けませんでした。この歌の作られたのは三月三十日。明ければ暦の上ではホトトギスの来鳴く「夏」四月。ホトトギスの初音を期待した歌です。 (田中夏陽子)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。