まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
035回「越の海の 信濃の浜を 行き暮らし」
2021年01月08日
越の海の
信濃の浜を
一日中歩き続けても余る
こんな長い春の日でさえ、
ツマのことを忘れてしまったりするものか。
片時も忘れられないものだ。
越(こし)の海の 信濃(しなぬ)の浜を 行(ゆ)き暮らし 長き春日も 忘れて思へや
大伴家持(巻17・四〇二〇)
天平二十年(七四八)正月二十九日(太陽暦の三月七日)に、大伴家持が詠んだ四首のうちの一首です。
この歌の前後に並べられた歌の内容から、射水郡で(いみずのこおり)の歌と想像されます。
富山湾に望む土地は、近代的漁港や工業地帯に整備されるまで、歌の通りに「行き暮らし」するほどの長大な砂浜が続いていました。
砂浜は、いくつかの河口で途切れます。だから、どこか一部の砂浜が「信濃の浜」と呼ばれていたと想像できますが、現在のどこに当たるのかは、残念ながら、まったくわかりません。(関 隆司)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。