まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
048回「おろかにそ 我は思ひし 乎布の浦の」
2021年04月09日

おろそかに
私は思っていたことだ。
乎布の浦の
荒磯(あらいそ)のあたりは、
見ても見飽きないですね。
おろかにそ 我は思ひし 乎布(をふ)の浦の 荒磯(ありそ)の巡(めぐ)り 見れど飽かずけり
田辺福麻呂(たなべのさきまろ)(巻18・四〇四九)
前回47に続く天平二十年三月二十五日遊覧での田辺福麻呂の作です。
福麻呂は、布勢の水海(ふせのみずうみ)の景色の美しさは、前もって家持の歌によって知らされていました。初句「おろか」は、「おろそか。いい加減」の意、福麻呂は、たいしたことはないだろうと思っていたのでしょう。
ところが、布勢の水海の一部である乎布の浦の荒磯の辺りを漕ぎ巡ると、想像以上の美しさです。その感動を、「見れど飽かずけり」と歌ったのです。「けり」は詠嘆の助動詞ともいわれ、いまそのことに気づいた詠嘆・驚嘆の気持を含めて述べるのに用いられることばです。(関隆司)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。