まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
050回「多祜の崎 木の暗茂に ほととぎす」
2021年04月23日

多祜(たこ)の崎の
木陰が暗くなるほどの茂みに、
ほととぎすが
来て鳴き立ててくれたら、
こんなにも恋い慕うことなどないのに。
多祜(たこ)の崎 木(こ)の暗茂(くれしげ)に ほととぎす 来鳴(きな)きとよめば はだ恋ひめやも
大伴家持(巻18・四〇五一)
前の第49回の歌を受けて、布勢の水海(ふせのみずうみ)に出かけて来たた時の歌の締めくくりとして家持が詠んだ歌です。
家持は「恋ひめやも」という反語(「…であろうか、いや…ではない」という意味)を使って「ホトトギスが来て鳴いてくれさえすれば、こんなにも恋い慕うことがあろうか、いや恋い慕うことなどない」と歌いました。
すばらしい人がやって来たのに、どうして鳴かないのかと詠んだ久米広縄(くめのひろなわ)の歌に引き続いて、「鳴かないからこそなおさら恋い慕うのですよ」と、ホトトギスが鳴くのを期待していた福麻呂(さきまろ)の思いをなぐさめるために詠んだのです。(新谷秀夫)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。