まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
058回「焼き大刀を 礪波の関に 明日よりは」
2021年06月19日

(やきたちを)
礪波(となみ)の関に、
明日からは
番人をもっと増やして、
あなたを引き留めよう。
焼き大刀を 礪波(となみ)の関に 明日よりは 守部(もりべ)遣(や)り添へ 君を留めむ
大伴家持(巻18・四〇八五)
天平感宝(かんぽう)元年(七四九)五月五日(太陽暦の五月二九日)の大伴家持の歌です。
「焼き大刀」は火に焼いて鍛(きた)えた大刀。それを礪石(砥石・といし)で磨(ト)ぐことから、トナミのトにかけた枕詞です。礪波の関は、富山県小矢部市(おやべし)西南部の礪波山(となみやま)の東麓にあった関所です。
題詞によると、この日、東大寺の占墾地使(せんこんちし)の僧平栄(へいえい)らを家持がもてなし、酒を送った時の歌です。四月一日の宣命によって寺々の墾田が許されたのを受けて、早速東大寺から墾田にする土地の状況を確かめに使者として僧が派遣されたのです。
都から来た僧を、家持たちも盛大に歓迎したことでしょう。(関隆司)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。