まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
066回「荊波の 里に宿借り 春雨に」
2021年08月13日

荊波(やぶなみ)の
里で宿を借り、
春雨に
降りこめられていると、
いとしい人に告げてやったか。
荊波(やぶなみ)の 里に宿借り 春雨(はるさめ)に 隠り障む(こもりつつむ)と 妹(いも)に告げつや
大伴家持(巻18・四一三六)
天平勝宝(しょうほう)二年(七五〇)二月十八日(太陽暦の四月三日)の大伴家持の歌です。
題詞に、
墾田地(こんでんち)を検察(けんさつ)する事に縁(よ)りて、礪波郡(となみのこほり)の主帳(しゅちゃう)多治比部北里(たぢひべのきたざと)が家に宿る。ここに忽ち(たちまち)に風雨起こり、辞去(じきょ)すること得(え)ずして作る歌
とあります。
主帳は郡司(ぐんじ)の第四等官。家持たちは、礪波郡の墾田地を視察時に、郡の第四等官の家に泊まり、風雨が激しくなって帰れなくなったようです。
結句に「妹」と見えるので、この時までに家持の妻が越中に来ていたと考える説もありますが、確かなことはわかりません。(関隆司)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。