まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
075回「朝床に 聞けば遥けし 射水河」
2021年11月03日

朝の床(とこ)で
聞くと遠く遥かに聞こえてくる。
射水河を
朝漕ぎながら
唱(うた)う舟人の声だ。
朝床(あさどこ)に 聞けば遥(はる)けし 射水河(いみづかは) 朝漕(あさこ)ぎしつつ 唱(うた)ふ船人(ふなびと)
大伴家持(巻19・四一五〇)
「遙けし」は、「はるか」から派生した、遠く遙かである意の形容詞で、集中にもう一例家持の例(巻17・三九八八)があるのみです。
射水川は現在の小矢部川(おやべがわ)のこと。当時は小矢部市津沢(つざわ)の南方で庄川(しょうがわ)(万葉でいう雄神川(おがみがわ))と合流し、国庁があった伏木(ふしき)のあたりから富山湾に注いでいました。
国守の館は「伏木気象資料館」あたりにあり、河口や海岸線は現在より近くて、舟人の歌声が家持の寝床にまで聞こえて来たのでしょう。
その歌声を「はるけし」と聞くところに、赴任して三年目を迎え、良民とその風土に親しんだ国守家持の面影があるといえます。(坂本信幸)

奈良時代に越中国守館があったとされる地に建つ高岡市伏木気象資料館(旧伏木測候所)。明治16年に藤井能三によって、わが国初の私立測候所として設立。その後二度の移転を経て、平成18年に登録有形文化財に登録された。
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。