まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
077回「紅の 衣にほはし 辟田川」
2021年11月19日

紅の
衣を色鮮やかに染めて、
この辟田川を、
絶えることなく
わたしは訪れて眺めよう。
紅の(くれなゐ) 衣(ころも)にほはし 辟田川(さきたがは) 絶ゆることなく 我(われ)かへり見む
大伴家持(巻19・四一五七)
天平勝宝二年(七五〇)三月八日(太陽暦の四月二二日)に大伴家持が詠んだ歌です。題詞に「鸕(う)を潜(かづ)くる歌」とある長歌一首(四一五六)、短歌二首のうちの第一短歌です。
古語の「にほふ」は嗅覚ではなく、色合いが照り映える意味で、ここでは妻が染めて贈ってくれた紅の衣が水に漬かって、いちだんと鮮やかになることをいっています。
「辟田河(さきたがわ)」は、現在のどの川かは不明です。
地名を手がかりに考えると、高岡市西田(さいだ)を流れる川と想像されますが、長歌には「落ち激(たぎ)ち流る」川と描写されており、西田付近の地形には残念ながら合いません。(関隆司)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。