まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
081回「ほととぎす 鳴き渡りぬと 告ぐれども」
2021年12月26日

ほととぎすが
鳴いて渡ったと
人が知らせてくれたけれど、
わたしはまだ聞いてはいない。
藤の花は盛りを過ぎてゆくのに。
ほととぎす 鳴き渡りぬと 告ぐれども 我聞き継(つ)がず 花は過ぎつつ
大伴家持(巻19・四一九四)
天平勝宝二年(七五〇)四月九日(太陽暦の五月二十二日)に家持が詠んだ「霍公鳥(ほととぎす)と藤の花とを詠む」歌に続けて、ほととぎすの鳴くのが遅いのを恨んで詠んだ歌のなかの一首です。
家持が生まれ育った都では立夏の日にほととぎすがやってきて鳴きはじめたのですが、この年は三月二十四日(現在の暦で五月八日)に立夏を迎えたのに、それから半月経ってもなかなか鳴かなかったようです。
人からほととぎすが鳴いたと聞いた家持は、自分はまだ聞いていないことをじれったく思い、早く自分も聞きたいと思ってこの歌を詠みました。(新谷秀夫)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。